低反発vs高反発

欧米人と日本人は骨格、骨密度、筋肉のつき方などが大きく異なります。高反発マットレスと低反発マットレスの特徴から日本人に本当にフィットするマットレスを検証します

欧米人との体格差

ウレタン系マットレスの中でも低反発と高反発の二つがあるのを、このサイトに辿り着いた皆さんはご存知だと思います。欧米諸国の外国人と我々日本人とでは骨格の大きさ、骨密度、重量、筋肉のつき方、骨盤の位置に至るまで大きな隔たりがあります。果たして日本人に合うのは低反発なのか高反発なのか色んな観点から検証したいと思います。

経済成長に伴い栄養が改善された現在でも、日本人と欧米人とでは身長をはじめ様々な違いがあります。 身長の平均だけ見てもその差は明らかです。またカルシウム摂取率の低い日本人は骨密度も低くなりがちです。 これは日本人、アメリカ人、オランダ人、フランス人の男性の平均身長、BMI値を元に作成された3DCGです。
左からアメリカ、日本、オランダ、フランス
欧米人、日本人比較

左からオランダ、アメリカ、フランス、日本
欧米人、日本人比較

横から見ると背中の曲線が日本人は比較的滑らかで、欧米人は特にお尻がでっぱっているのが分かります。 マットレス選びにとって背中の曲線はとても大事なものだと私は考えます。つまり欧米で流行っているマットレスが 日本人にもフィットするというのは大きな間違いです。もしあなたが一般的な日本人体型なら「欧米で人気!」という宣伝文句のマットレスは真っ先に選択肢から除外すべきでしょう。

デンマーク発の低反発マットレス

低反発素材は元々NASAにより、ロケット打ち上げ時の衝撃緩和の目的で開発されました。その素材をもとにマットレスを製品化したのがデンマークのテンピュール社です。テンピュールで取り扱っているマットレスのほとんどは海外で販売している商品となります。つまり決して日本人向けの商品ではないという事。一部「フトン」シリーズと名付けられたカテゴリは日本人向けに作られた商品です。反発が低く柔らかいので、マシュマロのような寝心地を味わうことができます。

低反発マットレスを選ぶ時の注意点

低反発は低いなりに反発するのがポイント。質が悪い低反発ウレタンは反発力が0(指で押しても戻ってこない)の事もあるので、しっかりと指押し確認が必要です。また、低反発は人が寝た場合、従来の形状から大きく変化します。そして睡眠時間の6時間~8時間は大きく変化したままになります。ということは芯材がひどく変形したままの時間が長くなるということであり、質の悪い低反発だと1ヵ月と経たずに凹んだ状態から戻らないということが起こりえます。保証の有無や、耐久性の言及にもしっかり目を向けましょう。

低反発マットレスのデメリット

・蒸れやすい、暑い
・室内温度により硬度が変わる
最近は軽減された低反発素材も増えてきましたが、一般的に低反発ウレタンは温度によって硬さの変化しやすい素材なのです。四季に富んだ温度変化の激しい日本においてこれほど向いていない素材もないでしょう。一年中エアコンをつけて室温を一定に保っている家庭でない限り、1年に渡って安定した寝心地を得られないというお粗末な素材と言えます。特に夏場は室温25度以上で就寝する場合も多く低反発素材がダレてもっちり感が増し、寝苦しいことこの上ないのです。

低反発マットレスが合う人

例えば姿勢が矯正不能なくらい歪んでいる人は、その歪んだ姿勢のまま寝るのが楽に感じます。 ということで「寝る人の姿勢をそのまま維持」して寝る分には低反発マットレスが合います。 主に高齢者や脊椎の変形に伴う腰痛(変形性脊椎症)を発症している方は低反発マットレスの方が熟睡できるでしょう。また冬場においては就寝前に十分に室温を上げておくことにより低反発素材が硬くなるのを防ぎ、柔らかくもっちりとしたまさに包まれるような寝心地を得ることができます。

低反発マットレスの需要について

一時は流行した低反発マットレスも今や下火です。理由は低反発を求める層がそもそも少なかったからに他なりません。低反発マットレスが合う人でも説明した通り、本来姿勢の歪みの少ない人には低反発マットレスは合わないからです。逆に姿勢の歪みが少ない人が低反発マットレスで長い間寝てしまうと逆に姿勢の悪化に伴う腰痛を発症する場合もあります。低反発マットレスの有名ブランドであるトゥルースリーパーが、今や高反発マットレスを大々的に展開していることからも低反発マットレスの需要の低さが垣間見えます。一方で低反発マットレスのパイオニア「テンピュール」も国内での業績は大変厳しいということですが、欧米では多少なり需要があります。日本人よりも背中の筋肉が発達しお尻がつきでた体つきは、柔らかでお尻がしっかりと沈み込むマットレスが好まれるからでしょう。

低反発の逆の発想で流行った高反発マットレス

高反発マットレスはイタリア製ブランドのマニフレックスがパイオニアと呼べるでしょう。しかし本国イタリアのマニフレックスと日本のマニフレックスの商品展開はまるで別物です。日本はあくまでも日本独自の仕様でマットレスを展開しています。またマニフレックス以外にも今は沢山のメーカーが登場しています。

高反発マットレスを選ぶ時の注意点

高反発マットレスは厚みと密度が特に重要です。ニュートン数なんてあってないような指標ですので信頼しすぎないようにしましょう。厚み5cm以上、密度30D以上、反発係数40%以上が高反発マットレスの必須条件と言えるでしょう。昨今は高反発マットレスのブームによってこのあたりの指標を全く無視した名ばかりの高反発マットレスも増えています。3つの指標をある程度クリアしているマットレスだけが、万人にフィットするであろう高反発マットレスですので商品の詳細は十分に確認しましょう。

高反発マットレスのデメリット

・商品数と価格差が激しいので選択に困る
・低反発マットレスほどではないが蒸れやすい
高反発マットレスは密度が重要!と私は常々言ってきましたが、最近は安物マットレスでさえ30Dを標榜するようになってきました。しかし、ウレタンの原料価格は原油と同じように相場が決まっています。ちゃんとした原料をちゃんとした分量で発泡させたウレタンはそんなに安くありません。何かを混ぜ込んで密度を上げたウレタンは結果的に長持ちしないマットレスということになります。市場に存在するほとんどのマットレスを試していますが、正直なところ1万円以下の高反発マットレスについては何らかの問題が発生する可能性が高いと言わざる得ません。

高反発マットレスが合う人

前かがみになったときに腰が痛い人、背筋を伸ばして寝るのが苦じゃない人。日本人は欧米人と比べ背中の筋肉が発達していないので高反発マットレスに寝ることによって立ったままの姿勢を維持し眠ることができます。私はマニフレックをはじめ、ある程度のレベルの高反発マットレスを長いことお客様に案内してきましたが、大体90%の人は高反発マットレスがフィットしリピーターになってくれています。高反発マットレスはまさに万人向けのマットレスと言えます。

高反発マットレスの需要について

低反発マットレスにとって代わるように台頭してきたのが高反発マットレスです。アスリートや有名人を多数起用して広告手法が一般的となり誰もかれも高反発マットレスを使ってる状態です。しかし、気を付けなければいけないのはアスリートと一般人とでは日本人と欧米人と同じように体格、筋肉のつき方に大きな隔たりがあります。アスリートが使っているからと言って必ずしもあなたの身体に良い影響を与えるものではないことを頭の片隅に置いておきましょう。国内では今や一般的とも呼べる知名度の高反発マットレスですが、欧米では高反発マットレス単体で寝具として使用されることは少ないです。数種類のウレタン素材を組み合わせて、欧米人の突き出たお尻がしっかりと沈み込みながらも大柄な体格を支える構造が取られています。

低反発vs高反発 私の結論

低反発マットレスの説明で日本人には合わないと断言してきましたが、低反発にも有効的な使い方があります。 それは厚み3cm~5cm程度の低反発パッド(マット)のようなものを活用する方法です。高反発マットレスは本来、硬すぎず柔らかすぎないように設計されていて当然なのですが、例えばメーカーが想定する範疇以外の体格の人が使ったり、またはクオリティの低い高反発マットレスだった場合にどうしても寝心地が合わないという人が出てきます。その場合に、高反発マットレスの寝心地をちょっと柔らかくするために低反発パッドを上に敷いて使うというのがオススメです。3cm~5cmの厚みであれば、過度に身体が沈み込み寝姿勢が歪むということもないですし低反発の寝心地を実現しながらも高反発マットレスで全身を体圧分散するという理想的なマットレスに早変わりします。事実、マニフレックスの商品で寝心地に定評のあるフラッグFXなども表面の2cmは低反発といっても差し支えない素材が使われています。これはマットレスを購入するときのコツにも繋がるのですが、なるべく寝心地の硬いものを購入することをお勧めします。硬い寝心地は柔らかくしようとすれば、パッドなどで調整できるのですが柔らかすぎるマットレスを硬い寝心地にするのは至難の技なのです。

低反発素材のパッド以外にも色んな種類のパッドが存在します。汗をかきやすい人には寝汗をグングン吸ってすぐに乾く羊毛パッドや、寒い冬に重宝する毛布素材のパッド。後は熱帯夜にひんやりする冷感パッドなんて商品もあります。基本は高反発マットレスを使用しつつパッドで寝心地を調整するというのが最終結論です。

 

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